この章の目的

人は、成長していくものです。

子供から大人へ成長する中で、さまざまな経験をし、考え方を身につけ、人との関わりを通じて、自分自身も少しずつ変化していきます。

しかし、人は必ず成長するからといって、自分の思い通りに成長するわけではありません。

同じ経験をしても、何を感じ、何を考え、どのように受け止めるのかによって、その後の選択や行動は変わります。

そして、その選択や行動が新しい経験を生み、その経験がまた次の考え方につながっていきます。

つまり、人の成長には、

考え方 → 選択 → 行動 → 経験 → 振り返り → 改善

という、さまざまな因果関係があります。

その中で、自分自身の考えを言葉にし、考え、選択し、行動し、経験から学び、次の行動をよりよくしていく。

こうしたことを繰り返すことで、少しずつ自分自身の思考の幅が広がり、考え方も深くなり、自分らしい未来の選択肢も増えていきます。

だからこそ私たちは、子供自身が自分の未来をつくっていくためには、こうした成長のプロセスを自分自身で進めていくための能力を育てることが大切だと考えています。

この章では、その基本となる6つの能力について説明します。

成長のプロセス育てていく能力この能力で大切にすること
① 言語化言語化する能力自分の中にある思いや考えを言葉にする
② 考える考える能力言葉にしたことを起点に、深く考え、可能性を広げる
③ 選択選択する能力自分で考えた上で、自分なりの方向を選ぶ
④ 行動行動する能力選んだことを、実際の一歩に移す
⑤ 振り返り振り返る能力経験から、何が起きたのか、何を学んだのかを考える
⑥ 改善改善する能力次はどうすればよいかを考え、よりよい方法へ変えていく

これは、6つの能力を別々に身につけるということではありません。

一つの経験を、自分自身の成長につなげていくための循環です。


1.言語化する能力

「何となくそう思う」から始めていい

子供の中には、何かを感じたり、考えたりしていても、それをうまく言葉にできないことがあります。

それは、「何も考えていない」ということではありません。

まだ自分の中にあるものが、言葉になっていないだけかもしれません。

だから最初から、きれいな答えを出す必要はありません。

「何となくこう思う」

「こっちの方がいい気がする」

「やってみたい」

そんなところから始めていいのです。

言葉にしてみることで、自分でも気づいていなかった考えが見えてくることがあります。

そして、言葉になったとき、初めてそのことについて自分自身で考え始めることができます。


2.考える能力

言葉にしたことから、さらに考えてみる

言葉にしたら、それで終わりではありません。

そこから、

「なぜそう思ったのだろう?」

「本当にそうなのだろう?」

「ほかにはどんな方法があるだろう?」

「自分はどうしたいのだろう?」

と考えてみます。

考えるということは、正しい答えを当てることではありません。

一つの考えだけで決めつけず、いろいろな方向から見てみることです。

知らなかったことを知る。

経験したことのないことを想像する。

別の方法を考えてみる。

そうすることで、自分の中にある思考の選択肢が少しずつ増えていきます。

そして、考える経験を繰り返すことで、考え方そのものも少しずつ深くなっていきます。


3.選択する能力

自分で考えたからこそ、自分で選ぶ

考えた結果、いくつかの可能性が見えてきたら、その中から自分で選びます。

ここで大切なのは、

「正解を選ぶこと」ではありません。

そのときの自分が、

「これをやってみたい」

「こちらの方が自分には合っている」

「まずはこれから始めてみよう」

と考えて、自分で選ぶことです。

もちろん、選んだことが思った通りにならないこともあります。

でも、それは無駄ではありません。

自分で選んだからこそ、その結果を自分の経験として受け止めることができます。

その経験が、次の選択をよりよくする材料になります。


4.行動する能力

考えたことを、現実の一歩に変える

どれだけ考えても、実際に行動しなければ、現実は変わりません。

だからこそ、

小さくてもいいから、やってみる。

ことが大切です。

最初から大きな目標を達成する必要はありません。

今日できること。

今できること。

自分で始められること。

その一歩を実際にやってみる。

行動すると、頭の中で考えていたときには分からなかったことが見えてきます。

「思っていたより難しかった」

「意外とできた」

「別の方法がよかった」

「もっとやってみたい」

そうした発見は、実際に行動したからこそ得られるものです。


5.振り返る能力

経験を、そのまま終わらせない

行動したら、それで終わりではありません。

その経験を振り返ってみます。

「やってみて、どうだった?」

「何がうまくいった?」

「何が難しかった?」

「最初に考えていたことと、何が違った?」

「やってみて、新しく分かったことは?」

振り返ることで、経験したことが単なる「出来事」ではなく、次に活かせる自分自身の情報になっていきます。

うまくいったことだけを見る必要もありません。

失敗したことや、思った通りにならなかったことにも、次につながる大切な情報があります。


6.改善する能力

「次はどうする?」を考える

振り返ったら、次に考えることがあります。

それが、

「次はどうする?」

です。

もっとよくするにはどうしたらいいのか。

別の方法を試してみた方がいいのか。

もう一度やってみるのか。

少しやり方を変えてみるのか。

改善とは、失敗を直すことだけではありません。

うまくいったことを、さらによくすることも改善です。

そして、自分で考えて方法を変え、もう一度行動してみる。

その繰り返しによって、自分自身の考え方や行動も少しずつ変わっていきます。


6つの能力は、一つの「成長の循環」

ここまで説明した6つの能力は、それぞれ独立したものではありません。

一つの経験を通じて、次のようにつながっています。

言語化する

考える

選択する

行動する

振り返る

改善する

また言葉にする

この循環を繰り返していくことで、

考えることが深くなる。

選択肢が増える。

自分で判断できるようになる。

行動の経験が増える。

経験から学べるようになる。

そして、その経験がまた次の思考につながっていきます。

つまり、能力は一度身につけたら終わりではありません。

使い、経験し、振り返り、改善することで、少しずつ育っていくものです。


私たちが考える「能力開発」

私たちは、子供に何か一つの答えを教え、その答えを覚えてもらうことだけを「能力開発」とは考えていません。

大切なのは、

自分で言葉にする。
自分で考える。
自分で選ぶ。
自分で行動する。
自分の経験を振り返る。
そして、次の自分へ改善していく。

この循環を、自分自身のものにしていくことです。

その積み重ねが、やがて一人ひとりの思考のネットワークを広げ、思考を深め、自分らしい未来を選択していく力につながっていく。

私たちは、それこそが子供の人生そのものにつながる「能力開発」だと考えています。

この章から、次の章へ

ここまで、子供自身が自分の未来を考え、成長していくために必要となる6つの能力について整理しました。

言語化する。
考える。
選択する。
行動する。
振り返る。
改善する。

これらは、どれか一つだけを身につければよいものではありません。

それぞれをつなげ、実際に使い、経験することで、少しずつ自分自身の能力として育っていきます。

しかし、子供の成長は、どの時期でも同じように進むわけではありません。

年齢や経験、現在の成長段階によって、考えられること、できること、必要となる経験も変わっていきます。

だからこそ、能力開発では、「何を育てるか」だけではなく、「今、どの成長段階にいるのか」を考えることも重要になります。

次の第6章では、子供の成長段階に応じて、どのように能力開発を考えていくのかについて整理します。