
この章の目的
人の成長には、偶然だけではなく、「考え方・選択・行動・経験」の積み重ねによる一定のプロセスがあることを理解する。
そのプロセスを繰り返すことで、自分自身の考え方や判断が少しずつ変わり、次の選択や行動につながっていきます。
この章の位置づけ
第1章では「子供の可能性」を、第2章では「人の成長の捉え方」を説明しました。
第3章では、
では、人は実際にどのようなプロセスを通じて成長していくのか。
ということを、具体的に整理します。
1.「なんとなく」から、自分の未来を考えてみる
最初から、自分の未来について明確な考えを持っている子供ばかりではありません。
「何がしたいのか分からない」
「特に思いつかない」
「自分には関係ない」
そんな状態から始まることもあります。
それは、何も考えていないということではありません。
まだ自分の中にあるものが、はっきり見えていないだけかもしれません。
だから最初は、
「こんなことができたらどうだろう」
「こんなことをやってみたい」
「こんな自分になれたらいいな」
という程度でも構いません。
大切なのは、今の自分だけではなく、少し先の未来にも目を向けてみることです。
2.言葉にすることから、始まる
「なんとなくこう思う」
「ちょっとやってみたい」
「こんなことができたらいい」
最初は、この程度でも構いません。
頭の中にあることを、まず言葉にしてみる。
すると、それまで自分でも気づかなかった考えが見えてくることがあります。
言葉にすることで、
「自分は、こんなことを考えていたんだ」
と、自分自身で確認できるようになるからです。
そして、言葉になったものを見たり、聞いたりすることで、次の「考える」につながっていきます。
3.「言語化 → 考える」というプロセス
言葉にしたら、そこで終わりではありません。
そこから、
「なぜ、そう思ったのだろう」
「本当にやってみたいのだろうか」
「やるとしたら、どうすればいいだろう」
「何から始めればいいだろう」
と考えていきます。
私たちは、この
言語化 → 考える
という流れを大切にしています。
言葉にすることで、考える対象がはっきりする。
考えることで、自分の目的や方法が少しずつ見えてくる。
そして、考えたことが次の「選択」につながります。
4.小さな一歩でも、自分で選ぶ
考えたからといって、すぐに大きなことを始める必要はありません。
むしろ最初は、小さな一歩で十分です。
「まず調べてみる」
「一度やってみる」
「誰かに聞いてみる」
「明日から少し練習してみる」
大切なのは、その一歩を自分自身で選ぶことです。
誰かに言われたからではなく、
「自分は、これをやってみよう」
と思って動く。
そこから、主体的な成長が始まります。
5.やってみたからこそ、分かることがある
考えているだけでは、分からないことがあります。
実際にやってみると、
「思っていたより難しい」
「意外と楽しい」
「ここは得意かもしれない」
「この方法ではうまくいかなかった」
など、新しいことが分かります。
これが経験です。
経験は、成功だけではありません。
失敗も、思ったようにいかなかったことも、大切な経験です。
なぜなら、その経験が次に考えるための材料になるからです。
やってみることで、初めて分かることがあります。
6.振り返ることで、次の選択が変わる
経験したら、そこで終わりではありません。
「どうだっただろう」
「何がうまくいっただろう」
「何がうまくいかなかっただろう」
「次はどうしてみよう」
と振り返ってみます。
すると、次の選択が変わってきます。
前と同じ方法を続けることもあれば、
「今度は違う方法を試してみよう」
と考えることもあります。
このように、経験を振り返ることで、次の考え方や行動が変わっていきます。
7.成長とは、「正しい答え」を覚えることではない
成長というと、
「正しいことを覚える」
「できることを増やす」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、知識や技術を身につけることも大切です。
しかし、それだけではありません。
自分で考え、
自分で選び、
自分でやってみて、
その結果から学ぶ。
その経験を次の考えや選択に生かす。
この繰り返しそのものが、人の成長につながります。
だから、
最初から正しい答えを出すことより、自分で考え、経験し、そこから学ぶことが大切です。
8.私たちが大切にする「成長の循環」
ここまでの流れを、一つの循環として見ることができます。
言語化
↓
考える
↓
選択
↓
行動
↓
経験
↓
振り返り
↓
改善
↓
また考える
この循環を繰り返すことで、少しずつ思考の選択肢が増えていきます。
そして、経験が増えることで、以前には考えられなかったことも考えられるようになります。
考えられることが増えれば、選択肢も増えます。
選択肢が増えれば、自分の未来について考える幅も広がります。
こうして、
思考の選択肢が増え、思考が深まり、自分自身の未来を少しずつ構築していく。
これが、私たちが考える「成長の循環」です。
9.成長のプロセスの主役は、子供自身
このプロセスで、一番大切なのは誰でしょうか。
子供自身です。
私たちが答えを決めて、子供をその方向へ動かすのではありません。
子供自身が、
考える。
選ぶ。
行動する。
経験する。
振り返る。
また考える。
その繰り返しによって、自分自身の成長をつくっていきます。
私たちは、そのための環境やプロセスを考え、必要なところを支えます。
成長のプロセスをつくるのは子供自身であり、私たちはそのプロセスを支える存在です。
この章のまとめ
人の成長には、一定の循環があります。
言語化 → 考える → 選択 → 行動 → 振り返り → 改善
この循環を繰り返すことで、経験が積み重なり、思考の選択肢が増え、思考が深くなっていきます。
そして、その成長の仕方は一人ひとり違います。
だからこそ、私たちは年齢だけで子供の成長を決めつけるのではなく、その子自身の現在を出発点として、その子自身の未来につながるプロセスを考えることを大切にしています。
この章から、次の章へ
ここまで見てきたように、人の成長は、ただ時間が経つだけで進んでいくものではありません。
自分の中にある思いや考えを言葉にする。
そこから考える。
自分で選ぶ。
実際に行動してみる。
経験を振り返る。
そして、次の行動を改善する。
この繰り返しによって、少しずつ自分の考え方や行動が変わり、成長につながっていきます。
しかし、この循環を動かすためには、もう一つ大切なことがあります。
それは、
「自分で一歩を踏み出してみる」ことです。
どれだけ考えても、実際に行動しなければ、新しい経験は生まれません。
そして、経験がなければ、振り返ることも、次の改善を考えることもできません。
だからこそ、子供自身が「やってみよう」と思い、自分の意思で最初の一歩を踏み出すことには、大きな意味があります。
もちろん、その一歩は大きな挑戦である必要はありません。
「ちょっと調べてみる」
「一度やってみる」
「誰かに聞いてみる」
そんな小さな一歩でも構いません。
大切なのは、誰かに動かされるのではなく、自分で考え、自分で選び、自分の意思で動いてみることです。
次の第4章では、
「子供が、自分で一歩を踏み出すためには、何が必要なのか」
について考えていきます。
そのために、大人は何をすればよいのか。
子供自身の「やってみよう」という気持ちを、どのように支えることができるのか。
そして、子供が自分自身の成長を、自分でつくっていくためには、どのような環境や関わりが必要なのか。
第4章では、「成長のプロセス」を、実際の「一歩」につなげていくための考え方を整理します。
