個人の考え方と仕事の判断基準はどう違うのか|第2回【テーマ01|ビジネス・マインドセット】
今回の学習目標:個人としての考え方と、仕事における判断基準の違いを理解する。
本記事は、固定ページ「成功に導く一流のビジネス力」で紹介している、12の能力開発テーマのうち、**「テーマ01|ビジネス・マインドセット」**に位置づけられます。
前回の記事では、仕事では知識や技術だけでなく、目的、役割、責任、相手、状況に応じて判断と行動を調整するための「ビジネス・マインドセット」が必要であることを確認しました。
今回は、個人としての考え方と、仕事における判断基準の違いについて考えます。
個人としての考え方だけでは判断できない場面がある
私たちは、それぞれ異なる経験、価値観、好み、得意・不得意を持っています。
同じ状況に直面しても、
- 自分はこうしたい
- この方法がやりやすい
- この人とは考え方が合わない
- ここまでは自分の仕事ではない
- 失敗する可能性があるので避けたい
など、感じ方や考え方は人によって異なります。
こうした個人としての考え方は、その人の個性を形づくる大切なものです。
しかし、仕事では、自分の考えや好みだけで判断できない場面があります。
なぜなら、仕事には自分以外にも、顧客、上司、同僚、部下、取引先などの関係者が存在し、共通の目的、役割、期限、品質、ルールがあるからです。
「自分がどう思うか」と「仕事として何が必要か」
例えば、会議で自分とは異なる意見が出たとします。
個人としては、その意見に納得できなかったり、反対したくなったりすることがあります。
しかし、仕事上の判断で重要なのは、自分がその意見を好きか嫌いかだけではありません。
- 今回の目的に合っているか
- 顧客や利用者に価値があるか
- 事実や情報に基づいているか
- 実行することが可能か
- どのようなリスクがあるか
- チーム全体にどのような影響があるか
という視点から考える必要があります。
自分の意見を持つことは大切です。
同時に、自分の考えだけを基準にするのではなく、仕事の目的や関係者への影響まで含めて判断することが求められます。
これが、個人としての考え方と、仕事における判断基準の大きな違いです。
個人の考え方をなくすことではない
ビジネス・マインドセットを持つというと、個人の感情や価値観を仕事から切り離し、組織の考えに無条件で従うことだと受け取られる場合があります。
しかし、ISI Managementでは、そのようには考えていません。
個人が持つ、
- 経験
- 知識
- 好奇心
- 誠実さ
- 責任感
- 共感力
- 創造性
- 問題意識
などは、仕事で価値を生み出すための重要な資源です。
必要なのは、それらを抑え込むことではありません。
自分の個性や強みを活かしながら、目的、役割、責任、相手、状況に応じて、その表し方や使い方を調整することです。
例えば、慎重に考えることが得意な人は、リスクを発見する力を仕事に活かせます。
一方で、慎重さが強くなりすぎて行動できなくなれば、機会を逃す可能性があります。
積極的に行動できる人は、仕事を前へ進める力を持っています。
一方で、確認が不足したまま進めれば、関係者へ負担をかけることがあります。
大切なのは、自分の特性を良い・悪いと決めつけることではありません。
今回の目的と状況に対して、自分の特性をどのように活かし、どの部分を調整する必要があるか。
この視点を持つことです。

仕事では共通の判断基準が必要になる
複数の人が関わる仕事では、それぞれが自分の好みや都合だけで行動すると、判断や連携にずれが生じます。
そこで、仕事では共通の判断基準が必要になります。
基本となるのは、次の5つの視点です。
1.目的
この仕事は、何のために行うのか。
2.役割
自分には、何を行うことが求められているのか。
3.責任
自分は、どこまで担当し、どのような結果に責任を持つのか。
4.相手
顧客や関係者は、何を必要としているのか。
5.状況
期限、品質、情報、資源、リスクなど、現在の条件はどうなっているのか。
迷ったときにこの5つへ立ち戻ることで、個人的な感情や思い込みだけに左右されず、仕事として必要な判断を考えやすくなります。
仕事で起こりやすい場面
例えば、自分の担当業務に遅れが生じているとします。
「もう少し自分で解決してから報告したい」と考えることがあるかもしれません。
これは、迷惑をかけたくない、自分の責任で解決したい、能力がないと思われたくない、といった個人としての考えから生じる場合があります。
しかし、仕事の判断基準から考えると、確認することが変わります。
- 納期に影響する可能性はあるか
- 他の担当者の仕事が止まる可能性はあるか
- 早く共有すれば選択肢を増やせるか
- 自分だけで解決することが、全体にとって最善か
- 自分には、問題を早期に報告する責任がないか
この場合、完成してから報告することより、問題が小さい段階で共有することの方が、仕事全体にとって価値があるかもしれません。
個人として「もう少し頑張りたい」と考えることと、仕事として「早く共有すべき」と判断することは、両立しない場合があります。
そのときに、目的、役割、責任、相手、状況から判断を調整することが、ビジネス・マインドセットの実践です。
感情を無視するのではなく、判断と分けて考える
仕事で不安、焦り、怒り、苦手意識などを感じること自体は、問題ではありません。
感情は、自分が置かれている状況を知るための情報にもなります。
ただし、感じたことをそのまま判断や行動に結びつけると、仕事の目的から外れることがあります。
重要なのは、
自分はいま何を感じているのか。
そのうえで、仕事として何を判断し、どのように行動する必要があるのか。
を分けて考えることです。
感情をなくすのではなく、感情を自覚したうえで、仕事に必要な判断へつなげます。
今回の到達点
個人としての考え方と、仕事における判断基準は、対立するものではありません。
個人の経験、価値観、個性、感情は、仕事に活かすことができます。
一方で、仕事では自分以外の人が関わり、共通の目的、役割、責任、条件があります。
そのため、
自分がどう思うかだけでなく、目的、役割、責任、相手、状況に照らして、判断と行動を調整する。
ことが必要になります。
個性をなくすのではなく、個性の使い方を仕事に合わせて調整する。
それが、今回学ぶビジネス・マインドセットです。
簡易実践ワーク
最近の仕事で、判断や対応に迷った場面を一つ思い出してください。
問い1
そのとき、自分は何を感じ、どのように考えていましたか。
問い2
その場面を、次の5つの視点から見直してください。
- 目的
- 役割
- 責任
- 相手
- 状況
自分の考えだけでは気づかなかった点はありますか。
問い3
同じような場面が再び起きた場合、次はどのように判断し、行動しますか。
すべてを変える必要はありません。
次に意識する行動を、一つだけ決めてください。
次の行動
次の仕事で判断に迷ったとき、すぐに結論を出す前に、次の問いを自分に投げかけてみてください。
私は個人としてどう感じているのか。
仕事の目的、役割、責任、相手、状況から考えると、何が必要なのか。
この二つを分けて考えることが、ビジネス・マインドセットを実践する第一歩になります。
次回の学習
考え方を理解し、必要な行動も分かっている。
それでも、実際には行動を変えられないことがあります。
次回は、
【テーマ01|ビジネス・マインドセット】分かっていても行動を変えられないのはなぜか
を通じて、新しい考え方に対して生まれる内面的な抵抗や、これまでの経験から形成された習慣について考えます。
関連ページ
テーマ01の学習記事
- なぜ仕事にはビジネス・マインドセットが必要なのか
- 個人の考え方と仕事の判断基準はどう違うのか(今回)
- 分かっていても行動を変えられないのはなぜか
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