なぜ仕事にはビジネス・マインドセットが必要なのか|第1回【テーマ01|ビジネス・マインドセット】

この記事で学ぶこと
- ビジネス・マインドセットの基本的な意味
- 知識や技術だけでは解決できない仕事上の問題
- 仕事に共通の判断基準が必要な理由
- 個性を活かしながら、役割に応じて行動する考え方
- 自分の仕事に必要な判断基準を確認する方法
知識や技術があっても、仕事がうまく進まないことがある
仕事に必要な知識や技術を身につけることは重要です。
しかし、知識や技術があるだけで、すべての仕事がうまく進むとは限りません。
例えば、次のようなことはないでしょうか。
- 指示された作業は行ったが、求められた成果とは違っていた
- 自分では丁寧に仕事をしたつもりだが、期限に間に合わなかった
- 問題を自分で解決しようとして、報告が遅れた
- 自分の考えでは正しいと思ったが、チームの方針と合っていなかった
- 専門的には正しくても、顧客が求める価値につながらなかった
- 相手へ伝えたつもりだったが、認識が共有されていなかった
- AIで効率よく資料を作成したが、内容の確認が十分でなかった
これらは、知識や技術だけの問題ではありません。
仕事の目的をどう捉えたか。
自分の役割をどう理解したか。
相手が何を求めているか。
何を基準に判断したか。
問題が起きたとき、どのように行動したか。
こうした仕事に対する物事の見方、考え方、判断基準が、結果に影響しています。
ビジネス・マインドセットとは
マインドセットとは、物事を判断し、行動するときの基本的な見方、考え方、思考の傾向を指します。
そこには、これまでの経験、教育、信念、価値観、判断基準、思い込み、習慣などが影響しています。
人は、自分が持っているマインドセットを通じて状況を捉え、判断し、行動します。
ビジネスにも、仕事を適切に進めるために必要なマインドセットがあります。
ISI Managementでは、ビジネス・マインドセットを次のように定義します。
ビジネス・マインドセットとは、自分の個性や強みを活かしながら、目的、役割、責任、相手、状況に応じて、判断と行動を適切に調整するための思考基盤です。
ビジネス・マインドセットは、個人としての人格を否定したり、別の人格をつくったりするものではありません。
自分自身がこれまで身につけてきた考え方に加えて、仕事に必要な視点と判断基準を学び、実践するものです。
なぜ、仕事には共通の判断基準が必要なのか
個人の生活では、法律や社会的なルールを守る範囲で、自分の価値観や考え方によって多くのことを選択できます。
一方、仕事は一人だけで完結するものではありません。
仕事には、顧客、上司、部下、同僚、取引先などの関係者が存在します。また、企業や組織には、目的、目標、役割、期限、品質、予算、ルールなどがあります。
複数の人が、それぞれの考え方だけで行動すると、次のような問題が起こります。
- 目指している成果が一致しない
- 優先順位が人によって異なる
- 期限や品質に対する認識が違う
- 必要な情報が共有されない
- 役割や責任の所在が曖昧になる
- 顧客への対応に一貫性がなくなる
- 問題が発生したときに連携できない
そのため、仕事では個人の考えだけでなく、目的や役割に基づく共通の判断基準が必要です。
これは、すべての人が同じ意見や個性を持つという意味ではありません。
考え方や意見が異なっていても、
- 何を目指しているのか
- 誰に価値を提供するのか
- 何をもって完了とするのか
- 誰が何を担うのか
- いつまでに行うのか
- どのルールを守るのか
- 問題をどのように共有するのか
を共通に理解することで、それぞれの知識、経験、個性を同じ目的へ活かすことができます。
ビジネス・マインドセットが判断と行動を変える
同じ出来事に直面しても、どのようなマインドセットを持っているかによって、判断と行動は変わります。
期限に間に合わない可能性がある場合
自分の都合だけで考えると、
まだ時間がある。もう少し自分で進めてから報告しよう。
と判断するかもしれません。
しかし、仕事全体への影響を考えると、
遅れる可能性が分かった段階で、現在の状況、原因、影響、対応案を関係者へ共有しよう。
という判断になります。
早期に共有することで、役割の調整、支援、期限の見直しなど、組織として対応できる可能性が生まれます。
指示された内容が分からない場合
分からないことを知られたくないという不安から、確認せずに仕事を進めると、目的と異なる結果になる可能性があります。
仕事の成果を基準に考えると、
分からない状態のまま進めることの方が、手戻りや遅れにつながる。目的、期限、完了条件を早い段階で確認しよう。
という行動を選びやすくなります。
顧客へ提案する場合
自分が説明したい商品や、自分が得意な方法を中心に考えると、顧客が求める内容とずれる場合があります。
顧客への価値を基準にすると、
顧客は何を解決したいのか。どのような結果を求めているのか。そのために、自分たちは何を提供できるのか。
という順序で考えるようになります。
AIを仕事で使用する場合
AIが作成した内容をそのまま使用すれば、作業時間を短縮できるかもしれません。
しかし、ビジネス上の責任を基準にすると、
目的に合っているか。情報は正確か。顧客や関係者に与える影響は何か。自分が内容を説明できるか。
を確認したうえで使用します。
AIが作成したことを理由に、確認や結果に対する責任がなくなるわけではありません。
このように、ビジネス・マインドセットは、目の前の出来事に対する判断と行動の方向を変えます。
個性をなくすのではなく、仕事に活かす
ビジネス・マインドセットについて考えるとき、「個人の考えや感情を抑え、組織に合わせなければならない」と受け取られることがあります。
しかし、それはISI Managementが考えるビジネス・マインドセットではありません。
個人が持っている次のような特徴は、ビジネスでも重要な資源です。
- 誠実さ
- 好奇心
- 共感力
- 責任感
- 創造性
- 専門知識
- これまでの経験
- 物事の捉え方
- 得意なコミュニケーション方法
重要なのは、自分の個性や強みを、目的や相手に応じてどのように活かすかです。
例えば、自分の意見をはっきり伝えられることは強みです。しかし、相手の話を聞かず、自分の考えだけを押し通せば、連携を妨げる可能性があります。
慎重に考えられることも強みです。しかし、確認を続けるだけで行動が遅れれば、機会を失うことがあります。
周囲へ配慮できることも強みです。しかし、関係を悪化させることを恐れて必要な報告や意見を控えれば、問題を大きくする場合があります。
強みは、使い方によって価値にも課題にもなります。
ビジネス・マインドセットは、自分の特徴を否定するのではなく、目的、役割、責任、相手に応じて適切に活かすための基準になります。
ビジネス・マインドセットは誰でも学ぶことができる
ビジネス・マインドセットは、生まれつき決まっているものではありません。
仕事の経験、周囲からの助言、研修、振り返りなどを通じて、学び、修正し、育てることができます。
ただし、考え方を一度理解しただけで、すぐに行動が変わるとは限りません。
人には、これまでの経験によって形成された考え方や習慣があります。新しい考え方に納得しても、実際の仕事では、これまでと同じ判断や行動を選ぶことがあります。
そのため、
知識を学ぶ
→ 自分との違いに気づく
→ 意識することを決める
→ 仕事で行動する
→ 結果を振り返る
→ 改善する
→ 継続する
という実践が必要です。
ビジネス・マインドセットは、知識として覚えるものではなく、仕事での判断と行動を通じて育てる能力です。
ビジネス・マインドセットを確認する5つの視点
仕事で判断に迷ったときは、次の5つの視点から考えることができます。
1.目的
この仕事は、何を実現するために行うのか。
目の前の作業だけでなく、その先にある目的を確認します。
2.役割
この仕事において、自分には何が求められているのか。
自分の担当内容だけでなく、チームや全体との関係も確認します。
3.責任
自分は何を完了し、何を報告し、どの結果に向き合う必要があるのか。
問題が発生した場合の対応も含めて考えます。
4.相手
顧客、上司、同僚、取引先など、相手は何を求めているのか。
自分が伝えたいことだけでなく、相手に必要な情報や価値を考えます。
5.状況
期限、品質、費用、リスク、組織の方針など、現在の状況で何を優先すべきか。
過去と同じ方法を続けるのではなく、現在の条件に応じて判断します。
この5つを確認することで、個人の感覚だけではなく、仕事の目的と価値に沿って考えやすくなります。
ビジネス・マインドセットについての誤解
組織の指示へ無条件に従うことではない
仕事には組織の方針やルールがありますが、明らかな問題やリスクに気づいた場合まで、何も考えずに従うという意味ではありません。
必要な事実を確認し、適切な相手へ報告・相談し、目的に沿った方法を考えることも、ビジネス・マインドセットの一部です。
感情をなくすことではない
人には、不安、緊張、迷い、怒りなどの感情があります。
重要なのは、感情があることを否定するのではなく、自分の状態に気づき、必要に応じて休養や相談を行いながら、問題解決に必要な判断とコミュニケーションへつなげることです。
すべての状況に一つの正解を当てはめることではない
仕事の目的、役割、相手、状況は変わります。
ある場面で適切だった方法が、別の場面でも同じように有効とは限りません。
共通する判断基準を持ちながら、状況に応じて考え、行動を調整する必要があります。
人格や人間性を評価するものではない
ビジネス・マインドセットは、人として正しいか、間違っているかを判定するものではありません。
仕事上の目的に対して、現在の判断や行動が適切かを確認し、必要な改善を考えるためのものです。
今日から実践できること
最初からすべての考え方や行動を変える必要はありません。
まず、現在担当している仕事を一つ選び、次の点を確認してみてください。
- この仕事の目的は何か
- 誰に、どのような価値を提供するのか
- 自分の役割と責任は何か
- 期限と完了条件は明確か
- 関係者と共有すべき情報は何か
- 起こる可能性がある問題は何か
- 次に行う具体的な行動は何か
確認できていない項目があれば、上司や関係者へ質問・相談することも、一つの行動です。
重要なのは、理解しただけで終わらせず、次の仕事で何を変えるかを決めることです。
今回の簡易実践ワーク
現在担当している仕事を一つ選び、次の問いについて考えてください。
1.仕事の目的
その仕事は、何を実現するために行っていますか。
2.提供する価値
その仕事によって、顧客、組織、チーム、関係者に、どのような価値を提供しますか。
3.自分の役割と責任
自分には何が求められ、どこまでを完了する責任がありますか。
4.現在の判断基準
その仕事を進めるとき、自分は何を基準に判断していますか。
個人の経験や感覚だけで判断している部分はないでしょうか。
5.次に実践する行動
目的、役割、責任、相手、状況の中から、次の仕事で確認することを一つ選んでください。
私が次の仕事で確認・実践すること:
____________________
実践後は、行動によって結果や相手の反応がどのように変わったかを振り返ります。
まとめ
ビジネス・マインドセットとは、自分の人格や個性を否定するものではありません。
自分の個性や強みを活かしながら、目的、役割、責任、相手、状況に応じて、判断と行動を適切に調整するための思考基盤です。
仕事は一人だけで完結するものではありません。
複数の人が協力して顧客や組織へ価値を提供するためには、共通する目的と判断基準が必要です。
知識や技術を持っているだけでなく、それらを目的に沿った判断と行動へ変え、相手への価値につなげる。
そのために、ビジネス・マインドセットが必要です。
まずは、現在の仕事について、目的・役割・責任・相手・状況の5つを確認し、次に変える行動を一つ決めることから始めてください。
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次の記事では、個人のマインドセットとビジネス・マインドセットの関係を、より具体的に整理します。
【テーマ01|ビジネス・マインドセット】個人の考え方と仕事の判断基準はどう違うのか
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